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脱退一時金は、短期滞在の外国人を対象に、厚生年金の保険料の掛け捨て防止のために、厚生年金保険から支給される一時金です。
厚生年金保険に6カ月以上加入したことがあり、老齢年金等の受給資格期間を満たしていない外国人が、日本を出国後2年以内に、日本年金機構に請求します。(日本を出国した後に請求します。)
請求には年金手帳が必要です。なくさずに持っておきましょう。
厚生年金保険の脱退一時金とは
短期滞在の外国人を対象に、厚生年金保険から支給される一時金です。
日本に短期滞在する外国人は厚生年金の保険料を支払っても、保険料を25年以上支払った人に支払われる老齢年金は受け取れません。
そのため保険料の掛け捨てを防ぐために、外国人が日本を出国後に請求すれば、厚生年金保険に入って日本の会社・団体等で働いた期間に応じて、一時金が支払われます。
厚生年金の被保険者期間が6カ月以上あり,老齢厚生年金等の受給資格期間(25年)を満たしていない外国人が、日本を出国後2年以内に請求すれば支払われます。
平成6年(1994年)に創設され、国民年金にも同様の制度があります。
脱退一時金を受給できる要件は
次の4つの条件にすべて当てはまる外国人が、退職などの理由で厚生年金保険の被保険者ではなくなり、日本を出国後2年以内に請求すれば受け取ることができます。
請求先は、日本年金機構です。
1.日本国籍を有していない人(外国人)
2.厚生年金保険の被保険者期間が6カ月以上ある人
(日本の会社等に勤めて、厚生年金保険に6カ月以上入っていた人)
3.日本に住所を有していない人(日本を出国した後に請求します)
4.これまで年金(障害手当金を含む)を受ける権利を持ったことのない人
脱退一時金は「日本に住所がないこと」が支給要件の一つです。
つまり「日本に住民票が無いこと」が必要です。
日本を出国する時は、あらかじめ出国前に、住民票のある市区町村で「転出届」の届出をすることが必要です。
転出届を行えば、出国予定日が到来すれば、住民票が「除票」になります。
日本に住民票が無い状態になります。
ここでは平成17年4月以降の加入期間に使われる計算式のみを紹介します。
1)受給金額
脱退一時金は、厚生年金の加入月数(被保険者期間)に応じて、計算されます。
この脱退一時金は、支給されるときに20.42%の所得税(復興特別所得税を含む)が差し引かれ(源泉徴収され)、残額が支給されます。
2)脱退一時金の計算式
脱退一時金 = 厚生年金保険の加入期間の平均標準報酬額 × 支給率
支給率とは、(保険料率×1/2)×被保険者期間に応じた数 です。
会社に勤めていた期間中の毎月の「標準報酬月額」と「標準賞与額」の合計額を勤務期間の総月数で割り、1カ月当りの平均額に換算した金額のことです。
「標準報酬月額」とは平均賃金に相当する金額です。
毎年4月~6月の3カ月間の賃金実績をもとにして「標準報酬総額」が決定されます。
「標準賞与額」とは、支払われた賞与額の1,000円以下の額を切捨てた1,000円単位の金額のことです。
厚生年金保険の加入期間、つまり「日本で会社に勤務していた期間」によって決まる係数です。
会社勤務の期間(実績)が6カ月から3年間までは、6カ月単位で係数が増加します。
しかし、3年以上の場合は係数は増加せず一定です。
つまり、日本の会社で5年間勤務して厚生年金保険料を支払っていても、「戻ってくるのは3年分」ということです。
転職で会社を変わっても、厚生年金保険に加入している限り被保険者期間は通算されます。
被保険者期間 (厚生年金保険の加入期間) | 係数 (支給率計算に使う数) |
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6月以上12月未満 | 6 |
12月以上18月未満 | 12 |
18月以上24月未満 | 18 |
24月以上30月未満 | 24 |
30月以上36月未満 | 30 |
36月以上 | 36 |
厚生年金に加入していた最終月の前年10月時点の保険料率を用います。
最終月が1月~8月の場合は前々年10月時点の保険料率を用います。
計算式だけでは分かりにくいので、「年収320万円で3年間働いた人」の脱退一時金の金額を見てみましょう。
計算例のとおり、約83万円の脱退一時金が支払われます。
1)前提
・毎月の賃金は20万円
・賞与1回当り40万円(賞与は年2回支給)
・年収320万円の従業員
・日本で3年間働いて帰国した場合
標準報酬月額…20万円
標準賞与額…40万円
として計算。
2)計算方法
(20万円×36か月+40万円×6回)÷36か月=960万円÷36か月
=266,666円 ←これが平均標準報酬額です。
266,666円 × 17.474 % × 1/2 × 36 = 838,750円
平均標準報酬額 厚生年金保険料率 係数 脱退一時金(100%額)
(平成26年9月~27年8月)
さらに、ここから20.42%の所得税(この例では 171,272円 )が源泉徴収されます。
外国人本人には、差額の79.58%相当額(この例では 667,478円 )が支払われます。
つまり、日本年金機構に請求してから約4か月後に、本人名義の銀行口座に79.58%相当額 (この例では 667,478円 )がアメリカドル(USD)などで支給されます。
所得税は、後日、還付申告することで、払い戻しを受けることができます。
(日本国内の納税管理人をとおして、手続きすることができます。)
脱退一時金の請求手続き
脱退一時金の請求(申請)に関する提出先、提出期限、提出書類、添付書類は次のとおりです。
提出先 | 日本年金機構 |
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提出期限 | 最後に国民年金の被保険者の資格を喪失したときから2年以内 (「日本国内に住所を有しなくなった日」から2年以内) |
提出書類 | 脱退一時金裁定請求書(国民年金/厚生年金保険) |
添付書類 | 1.パスポートの写し (最後に日本を出国した年月日、氏名、生年月日、国籍、 署名、在留資格が確認できるページ) 2.在留カード(表・裏)両面のコピー 3.銀行名、支店名、支店の所在地、口座番号、 請求人本人の口座名義であることが確認できる書類 (銀行が発行した証明書等) または、裁定請求書の「銀行の口座証明印」の欄に銀行の証明を受ける。 4.年金手帳 |
脱退一時金はドル、ユーロなどの外国の通貨で支払われます。
脱退一時金は日本円ではなく、各国の通貨で支払われます。
ただし、現在はアメリカ・ドル(USD)やユーロなどによる支払い(27カ国)が中心で、アジアのほとんどの国はアメリカ・ドルで支払われます。
中国、韓国、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどの国には、アメリカ・ドルで支払われます。
為替レートは、支給決定された月の平均為替レートをもとに支給額が算定されます。申請書を提出した時点の為替レートではありません。
支給が決まると、日本の大手都市銀行経由で振込が行われています。
なお、脱退一時金を日本円で受け取りたいときは、脱退一時金裁定請求書に日本国内の銀行口座(本人名義の口座に限る)を指定すれば、日本円で支払われます。
支給までにかかる期間ですが、書類の不備がないときでも、日本年金機構に書類が受理されてから、3~4カ月程度かかります。
脱退一時金の送金と同時に「脱退一時金支給決定通知書」が送付されます。この書類は後日、納税管理人が所得税の還付申告を行うときに必要になります。
脱退一時金を受け取った場合は、計算の前提となった期間は、年金の加入期間でなかったことになります。
もし将来、外国人が日本に戻ってきても、その期間は年金の加入期間にはなりません。
あらかじめ注意が必要です。
日本は現在、下記の国と「年金加入期間の通算」の社会保障協定を結んでいます。
これは外国人の母国と日本での「社会保障に二重に加入することを防ぎ」、「日本と相手国の年金加入期間を互いに通算する」ことができるようにした制度です。
脱退一時金の支給を受けると、社会保障協定にもとづき、脱退一時金の計算の基礎となった期間(日本の会社で働いた期間)は年金加入期間として通算されなくなります。
「年金加入期間の通算」が可能な国の人は、帰国後に、
①将来、加入期間を通算して年金として受給するか、
②脱退一時金を受けるか、
を十分に比較して判断することが大切です。
例えば、日本の会社で5年間働いていたドイツ人は、帰国後に脱退一時金を受け取ると、日本で勤務した5年間は、将来本国(ドイツ)で年金を受け取るときに「年金の加入期間として通算されない」ことになります。
どちらを選択するかは本人の自由ですが、脱退一時金を受けた場合は、「その期間だけ将来の年金の加入期間が減る」ことに注意が必要です。
日本と社会保障協定を結んでいる国(2016年10月現在)
ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド
(注)イギリス、韓国、イタリアは「保険料の二重負担防止」のみです。
なお、イタリア、ルクセンブルク、フィリピンは署名済みです。
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